【天ぷら油火災はなぜ起こる?】
現在市販されている天ぷら油(菜種油、コーン油、大豆油等)はその温度が発火点(約360~380℃)以上になれば、 火種がなくても発火して燃焼をはじめます。一般に家庭で使用する油量程度の天ぷら油(使用前のもの)を家庭用ガスこんろで加熱すると、約5分で揚げ物に適した温度(約160から200℃)に達し、 そのままの状態で放置しておくと約10分ほどで異臭とともに白煙が立ち始め、20~30分で発火点に達し火がつきます。また、天ぷらなどに一度使用するなど、鍋に揚げかす等がある場合には、それが灯芯となって200℃近くで発火することがあり、 加熱し始めてから発火するまでの時間が短くなることがありますので、ちょっと目を離したすきに火災になってしまうことが考えられます。
天ぷら火災を防ぐには、火をかけたまま台所を離れない!ということが一番です。当たり前のことだと思うかもしれませんが、火災にあった誰しもがまさか燃えるとは思っていなかったと思います。少し目を離した隙にあっという間に火が大きくなっているかもしれません。慌てて水をかけてより燃え広がったかもしれません。いつ誰の身に起こるかわからないのが火災です。予備知識としてこの記事を読んでいただき、少しでも火災被害が減れば幸いです。
どうしても離れる必要がある時は、どんな短時間であろうとも、火を消す習慣をつければ火災は防ぐことができます。2016年の新潟県糸魚川市の大規模火災、2022年に福岡県旦過市場での火災、2024年の鳥町食道街火災など近年の大規模火災もコンロの火をつけたままその場を離れた事が原因と言われています。
【天ぷら油火災が起こった時にやってはいけない事】
高温の油に水は絶対にかけてはいけません。水が高温の油に触れた瞬間、水が気化し水蒸気爆発を起こしてしまいます。また水分の多い野菜を入れるときも注意が必要です。炎が爆発的に拡大し、周囲に油が飛散して、自身にかかり大やけどを負ったりするなど大変危険です。慌てないで炎の状態を確認し下記の適切な対応を取るようにしてください。
【天ぷら油火災の正しい消火方法】
まず初めにコンロの火を消しましょう。
①蓋を用いた消火方法
炎が小さく(炎の高さ10cm程度)油面上をちらちら動き回っているような場合、鍋の全面を覆うふたをして空気を遮断することにより消火することができます。ただし、すぐにふたをとると再び発火するおそれがありますので、油温が十分下がるまで待ちましょう。
②タオル等を用いた消火方法
水分を絞った濡れたタオル(絞るのを忘れないでください。水滴が落ちれば水蒸気爆発します)等を何枚か重ねて覆い、空気を遮断することにより消火することもできます。
この方法は、かぶせるときに炎でやけどをしたり、あやまって鍋をひっくり返したり、鍋を全面的に覆うことができないこともありますので、十分注意して行う必要があります。
水分が油に垂れない程度の濡れたタオルなどを即座に複数枚用意しなければいけないため即座に行うことはなかなか難しいかもしれません。
③消火器を使用して消火する方法
消火器で消火する方法が最もよい方法です。おそらくここまで記載した上記の内容を実際の火事の時に考えて行うのはなかなか難しいことだと思います。そのため、天ぷら油火災への効果や操作性を考慮し、事業者なら業務用強化液消火器、ご家庭なら住宅用消火器やスプレーのように使用するエアゾール式簡易消火具などで消火を行うのが安全です。
一般的に使用される粉末消火器だと鍋の油全体を覆おうように薬剤を散布し酸素を遮断することで消火しますが、油の液面に粉末は浮いており完全に酸素を遮断できない場合、油自体の温度が発火点を超えていれば再発火してしまいます。そのため油火災を粉末消火器で消そうとする場合コツが必要で消火の難易度は高いです。実際に油を燃やして消火実験をしたことがありますが、使い方を分かっている人でも成功率は5分程度でした。
ですが、強化液消火器、住宅用消火器(強化液)は液体の為、油に浸透し油自体を化学反応により不燃化するとともに温度を効率良く下げるため、消火器を初めて使う人でも確実に消火することができます。
また、消火器は初期消火のため壁や天井まで延焼した場合は消火の難易度が上がるため、無理だと思ったら避難しましょう。
【その他の注意事項】
なお、消火後安全な状態になってから、ガスの元栓を閉めることも忘れずに行ってください。
天ぷら油火災は、未然に防止できるように日頃から心がけることが大切です。
万が一火災が起きた場合には、慌てずに落ちついて対処することが第一です。
天ぷら油火災の危険性を十分に認識し、消火器の使い方などいざというときの行動力を身に付けておきましょう。
事業者様へ
粉末消火器は法令上どの火災にも対応できるため、ほとんどの場合は粉末消火器で法令をクリアできるように消火器が設置されています。強化液は粉末消火器と比べて単価が高くなってしまいますが、てんぷら油火災等にはとても効果的なため火災リスクと相談し必要であれば強化液消火器の設置をご検討ください。管轄エリアの消防署によっては粉末消火器と強化液消火器の併用設置の指導をしているところがあります。
ご契約いただいているお客様は点検の際などご相談いただければ現場をみてご提案させていただきます。
その他下記の適応種別など参考に消火器のご購入の検討及び弊社へご相談ください。
火事が起こっても消火器で消せる程度の火災で済ませることが出来れば被害は最小限に抑えられます。
また、新潟県糸魚川市の大規模火災の影響もあり、飲食店では火を使用する場合、面積に関係なく消火器の設置が義務化されています。商業ビルのテナントであってもコンロがあれば店内に設置義務があります。
小規模飲食店等の消火器設置義務化リーフレット(一般財団法人 日本消防設備安全センター)(PDF:710KB)
小規模の建物であれば総務省消防庁で消防用設備等点検アプリを作っておりますのでご自身で点検して報告も可能です。詳しくは所轄消防署へ問い合わせて下さい。アプリはお手持ちのスマートフォンなどで検索してください。
ご家庭の方へ
事業用の強化液消火器と住宅用消火器の違い
事業用の強化液消火器
・耐用年数10年 重さは3ℓの物で6~7kg程度
・本体は赤色(法令で25%以上赤と決まっています。)
・ホース付きのため狙いが絞りやすい。
・薬剤の容量が多い(3ℓ~)為油以外の普通火災でも初期消火として役に立つ。
住宅用消火器
・耐用年数は5年 重さは1ℓの物で2.5kg程度
・色は多彩でデザイン性が高い消火器がありインテリアとしても違和感ありません。
・ホース付きがないのが多いですが、軽量の為取り回し易いです。
・軽量(薬剤1ℓ)のため女性やお年寄りでも使いやすい。
このような違いがあります。メーカーでそれぞれデザインの違い等がありますのでご検討ください。ご購入の際は弊社へご連絡いただければ購入可能です。また、弊社は消火器の引取を行う特定窓口となっていますので消火器の処分にお困りの方もご連絡ください。
住宅用消火器は各メーカーでデザインが違いますので下記をご覧ください。
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