差動式分布型感知器空気管式の銅管引替工事を行いました。国指定重要文化財の建造物には文化財保護法によって面積等関係なく消防設備の設置が義務付けられています。国指定ではない場合は消防法の規定により用途や面積で判断し消防設備の設置が行われます。
今回は弊社で点検を行った際に屋根周り及び軒下の空気管の銅管に漏れがあることがわかった為、不備箇所の特定とその後、空気管(銅管)の引替工事になります。
PDFの図面のように銅管が配置されているのですが、床下は梁の外側と内側、屋根の軒下と外側と銅管を張り巡らすため、建物があまり大きくなくてもそれぞれ50~100m程度の長さになります。
銅管大きさは直径1.5mm程度のため亀裂としては1mm無い程度の僅かな亀裂ですが、銅管内部が密閉された状態でないと感知器として機能しません。空気管式というのは銅管外部の温度が上昇した際に生じる銅管内部の熱膨張(暖かくなると空気は体積が増えます)により作動します。穴があれば膨張した空気も穴から出てしまうので差動しなくなります。
空気管は目立ちにくく景観を確保でき、感知範囲も広い、屋外でも使用できる、開口部も最小限で済むといった理由で弊社が設計や工事を行った文化財はこの方式を採用しております。一般の方が普通に文化財を観光していても空気管がどこを通っているか見てもわからないくらいだと思います。それだけ景観を阻害しないのは文化財を観光資源として扱うにあたって大事なことですし、何よりいっぱい穴を開けたりする必要がないというのも文化財を保護するという意味でとても大きな意味を持つ事だと思います。
空気管式自体は現在も工場や体育館、倉庫など大空間の建物に数多く使用されていますが、そういったところはメッセンジャーワイヤー付空気管を使用するので、同じ空気管式でも施工方法が大きく異なります。文化財特有の施工方法のため近年では空気管を張れる業者が全国的に不足しているらしく今後はこういった設計は難しくなってくるかもと国の有識者の方がおっしゃっていました。
文化財を守り後世へ受け継いでいく為に、火災から守るのは我々の責務であるという思いを持ち貢献して参ります。
参考資料としてこれは良くないと思った施工例です。